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臨床心理士の「マインドフルネス瞑想」体験記

1.はじめに

注目されつつあるマインドフルネス

マインドフルネス、という言葉がある。臨床心理学の世界では昨今、少し流行っているかもしれない。その意味するところはとても深淵で一言で説明することは難しいが、「Mindfulness is the awareness that emerges through paying attention on purpose, in the present moment, and nonjudgmentally, to things as they are.(マインドフルネスとは、意識的に、今この瞬間に、判断せずに、あるがままに意識を向けることで得られる気付きである)(Williams, J.M.G., Teasdale, J.D., Segal, Z.V., & Kabat-Zinn, J. , 2007)」とされている。 このマインドフルネスは仏教や禅の考えをベースにしており、日本人にもなじみやすいものと思われるが、実は昨今のブームは海外で生まれた認知行動療法の第3の波(※1)として逆輸入される型で起こっている。近年、関連書籍が日本語に翻訳されつつあるので、日本でも理論的な理解はある程度できるようになっている。臨床ではうつの反すうに対するエビデンスが得られており、海外では集団療法などが開発されている。 最近では、グーグルやアップル、ゴールドマン・サックスといった世界的に有名な企業の研修で、マインドフルネスが取りいれられていることも話題になっている。マインドフルネスで、集中力を養い、ストレスを軽減することで、ビジネスのパフォーマンスがアップすると言われている。

多くの心理療法に通底する重要なエッセンス

これまで私自身の臨床経験を積む中で、都度、必要と感じる療法を学んできた。社会学を学んでいた学部時代はユングに関心があり、大学院修士課程で本格的に臨床心理学を学んだ時はコミュニティ心理学、現場に出てからは精神分析、大学院博士課程に入ってからは認知行動療法という変遷を経て今に至る。こうして並べてみると、この変遷はもはや節操がないともいえる。しかし、いずれも必然であり、不思議なことに、このすべての要素が今も私の臨床の根底に混乱することなく根付いている。 しかし、このようにあらゆる療法に触れながらも、私自身の臨床の一部には、依然として既存の理論で十分に説明できない部分があるような気がしていた。そしてそれはかなり本質的な重要な何かであるという気がしながらも、自分でも果たしてそれが何かをうまく説明できないでいた。それが何かを探し求めて、上述の変遷をたどる道すがら、内観療法(※2)や森田療法(※3)といった日本固有の心理療法の作用機序にも触れてきた。マインドフルネスに関心を持ったのも、その延長線上である。内観療法、森田療法、マインドフルネスはいずれも仏教や禅の思想をベースにしているという共通点があるが、特にマインドフルネスには多くの心理療法に通底する重要なエッセンスがあるような気がしている。 そして、そのエッセンスは、「思い通りにならない」と思い悩む多くの人にとって、とても重要なものではないかと感じている。私は研究および臨床では、失業者に対する心理的援助を主なテーマとして研究をしてきたが、望まざる失業はまさに自分のキャリアを思うように歩めない状況と捉えることができる。一方で、働く人も働いていれば幸せということはなく、たとえ働いていたとしても、思うように働けないこともある(その方が多いかもしれない)。認知行動療法の第2世代(※1)は、認知的介入を行う認知療法とされているが、実際の臨床現場では、どんなに認知を変えても現実や環境そのものは変えられないという限界を感じることも少なくない。特に失業などのライフイベント上の悩みやストレスは、認知を変えることで一瞬楽になることができたとしても、ライフキャリアレベルで認知を変えることはかなり難しい。中には、表層的なポジティブシンキングに空々しさを覚える人もいる(私自身が時折そう感じることがある)。どうしたって、今の厳しい現実に向き合い、それを認め、受け入れなければならないことがある。しかし、それは容易ではない。現実をありのままに認めるマインドフルネスは、こうした苦境を生き抜くレジリエンス(回復力)につながる概念ではないかと感じてきた。

そう思いつつ、この10年、マインドフルネスについては理論的な理解を深めるにとどまってきた。しかし、どんなに理論的に理解しても、今一つその実態が実感を持って理解できないという限界を感じるようになった。マインドフルネスでは何をするのか、どういう効果があるのか、頭では理解できるが、中身がブラックボックスで、実際の体験として一体何が起こっているのかはいくら本を読んでもわからない。アウトプットはわかるが、“どういう流れで変わっていくのか”がどうしても知りたくなった。 そこで、ついにマインドフルネスを自らが体験する研修に参加することにした。臨床心理士という援助者として仕事をする以上、頭の理解ではなく、自らの身体と感覚を使ってマインドフルネスが何かを体験的に知る必要がある。また、援助者は援助者であるより前に普通に悩みを抱える一個人でもある。援助専門職として専門的知識やスキルを身につけることは当然大事な作業であるが、それと同時に、まずは一個人として純粋に自分自身の体験に浸り、自己に向き合うことが何より大切ではないかと感じている。そして、自らの体験を通してマインドフルネスを臨床に活かす方法を考える、それがこの研修の目的である。

2.オックスフォード マインドフルネスセンター

黙って瞑想する「Silent Retreat」

2014年5月、私は「OxfordMindfulnessCenter(オックスフォードマインドフルネスセンター)」(以下OMC;http://oxfordmindfulness.org/)が企画したマインドフルネスを体験するための7日間の「SilentRetreat(サイレントリトリート)」に参加した。日本ではマインドフルネスについて体系立って学べる機会が得にくいが、海外では多くの研修が開催されている。私の知るところでは、マインドフルネスはアメリカ、イギリス、オーストラリアなどで発展しており、研修好きな人たちが熱心に参加しているようである。中でもオックスフォード大学のOMCは、マインドフルネスについて研究と実践の両面からアカデミックな展開をしており、今後の臨床における発展を考えるためには絶好の場所であった。

参加者は、イギリス在住者が大半であったが、中には他の欧米圏からの参加者も見られた。が、予想通り、日本から来ている参加者は少なく、参加者の中でもかなり目立つ存在となっていたようである。参加者の多くは医師や心理士などの援助職が多く、かつ大半が教える立場にある人たちであった。マインドフルネスを自分自身で教えるため、「まずは自分が体験しよう」と思っていたようだ。参加者との対話の中で多くの参加者が「マインドフルネスは魅力的なアプローチではあるが、宗教性を感じる人もいないわけではなく、誤解がないよう、慎重に伝えていくべきものである」と思っていたことが窺われた。その懸念は、日本人である私だけではなく、欧米諸国においても同様であるようである。 ちなみに私が体験した「Silent Retreat」のプログラムの流れは、以下となっている。リトリートは7日間続くが、日々のスケジュールは基本的に毎日同じである。このように同じことを粛々と繰り返す毎日にうんざりする人もいるかもしれない。しかし、少なくとも私の体験では、毎日同じことをしているにもかかわらず、7日間のうちに体験が大きく変化した。これは、逆に驚くべきことである。

今回の体験記は主観的なもの

ここからは1日目のプログラムから体験したことを紹介していくが、具体的な研修内容を紹介することは意図していない。あくまで個人的な主観の羅列である。また、理論的なことはアカデミックな場できちんと伝えていくつもりなので、ところどころで中途半端に言及するに留めている(というか、体験にも関わるので排除しきれない)。 この体験記が以下のような方に役立てば幸いである。

  • マインドフルネスでどのような体験が起こるか知りたい方
  • マインドフルネス瞑想に興味がある方
  • ストレスへの対処法を身につけたい方
  • 生きづらさを感じている方

もし、これから同様のリトリートに参加したいと思っている人がこれを読むと新鮮さがなくなってしまうかもしれない(が、本当にマインドフルな人は自身の体験をあるがままに受け入れることができるであろうから、私の経験など気にしない可能性もある)。少なくともマインドフルネスではどんなことが起こりそうかをあらかじめ知りたい人には、多少なりとも心の準備ができるかもしれない。 ただし、繰り返しとなるが、体験は千差万別であり、私の体験には私なりの歪みがあるので、必ずしもすべての人が同様の体験をするわけではない。また、私がマインドフルネスについて本当に正しく理解しているかどうかはわからないことをお断りしておく。

3.「マインドフルネス瞑想」体験記

PDF形式で各章分割されております。ダウンロードしてお読みください。

4.体験を終えて

Silent Retreatを終えて半年が経つが、その後、自分自身の生活でマインドフルネスが習慣化しているかというとまだうまくできてない。実際に瞑想に使える時間は限られている。しかし、日々の生活の中でマインドフルネスであることを意識する瞬間は増え、味わう瞬間が深くなっているように感じる。 コントロールできない、抗いがたい状況に陥ったとき、どう生きていけばいいのか、そういう状態にある人を援助することが私の仕事である。状況は何も変わらなくても、「今、この瞬間がある」ことを相対化することで、人生の味わい方が深くなることが重要だと思っている。どうにもならないことを受け入れながら、それでも今を生きていくささやかな幸せを感じられるようになるために、マインドフルネスは役に立つものなのではないだろうか。

しかし、私のマインドフルネス体験は大変拙いものである。また、英語の壁もあり、理論的にも、本当にマインドフルネスを理解できているかどうかはわからない。しかし、私が理解した範囲ではあるが、私の体験を通してマインドフルネスとは何かを各々の立場から考えていただければ幸いである。 後半になればなるほど、文章量が多くなり、前半の理屈臭さはどこに行ったのかと思うほど、空想的である(そしてやや冗長でもある)。しかし、ここは敢えてこのままとしたい。なぜなら、これこそが私の7日間に起こったShiftなのだから。

最後に、私の体験記を公開することを快諾してくれたJohnとChristina、そして私がマインドフルネスに浸る時間を持つことを許してくれたすべての人に心から感謝したい。

2014年11月
高橋美保

引用文献
Williams, J.M.G., Teasdale, J.D., Segal, Z.V., & Kabat-Zinn, J. (2007) The Mindful Way Through Depression: Freeing Yourself from Chronic Unhappiness (includes Guided Meditation Practices CD)New York, Guilford

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